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調査研究概要

都市計画争訟研究会の研究概要について

背景

都市計画の決定又は変更(以下「都市計画決定等」という。)について、これまでのところ、最高裁は、取消訴訟等の対象としての処分性を否定しており、都市計画決定等に不服がある者は、直接その適否を争うことができない状況にある。
 このように都市計画決定等に処分性が認められないことが判例により確立しているため、実質的に都市計画決定等の違法性を争う別の形の訴訟が頻発している (例えば、都市計画事業認可取消訴訟の中で、当該事業認可の前提となる都市計画決定等が争われた環状6号線訴訟、小田急訴訟や目黒公園訴訟、損害賠償請求訴訟の中で、前提となる地区計画が争われた国立市マンション訴訟等)。
 しかし、都市計画決定等そのものを争うのではなく、後行処分についての取消訴訟を提起し、前提となる都市計画決定等の違法性を主張する等の手法を用いるのでは、後行処分がなされるのを待って訴えを提起しなければならないことや、違法と判断されてもその都市計画全体が取り消されるわけではないこと等、権利救済の手法としては、極めて不充分なものである。
 一方で、司法制度改革の一環として行政事件訴訟制度の見直しがなされ、行政計画に対する司法審査のあり方が議論されたが、行政計画の多様性を理由に、個別法ごとに検討する必要性が説かれている。すなわち、都市計画に関する争訟については、その独自の特質に基づいて、その手法を検討すべきということが導かれるわけである。 上記のような状況を踏まえ、財団法人都市計画協会は、自主研究として、代表的な行政計画の一つである都市計画に係る争訟制度のあり方について検討した。

検討内容

以下二つの理由から、都市計画決定等そのものを争訟手続にのせる高度の必要性が認められる。

  1. 都市計画決定等に反映されなかった主観的個別利益について、十分な意見表明の機会とこれに対する行政側の配慮の機会を確保することが必要である。
  2. 都市計画決定等そのものを争訟手続にのせることで、事前の住民参加手続も含めた早期の段階において都市計画に係る関係者間の利害がより綿密に調整され、広汎な合意の成立によって決定手続の効率的(手戻りのない)実施が可能となるとともに、これらの過程を通じて事後的争訟自体も減少していくという効果が予想される。
      また、都市計画は、その決定に高度の専門性を要する等、独自の性質を有するので、都市計画決定等についての争訟制度を構築するに当たっては、(1)多数当事者の利害調整の必要性、(2)既存の秩序との調和の必要性、(3)多様な救済措置の必要性、(4)都市計画の広範な裁量性、(5)専門的・技術的な判断の必要性、等の点に注意する必要がある。
      以上の諸点を勘案し、当研究会は、都市計画決定等について行政不服審査法(以下「行服法」という。)上の処分とみなして行政不服審査の対象とすること(裁決主義)を提案する。
     この方法によれば、審査庁が処分庁に対して裁決で計画の変更を命じ、これを受けて処分庁が計画変更を行うので遡及効の問題は生じないし、審査庁は具体的な計画の変更内容を追及し、あるいは代替案を示し、和解的妥協的措置を命ずる等により、多様な利害調整が可能となりうる。
     さらに、報告書においては、上記裁決主義を採用するに当たって、紛争解決としての高度の実効性を実現するため、具体的方策として、不服審査の対象とすべき都市計画の範囲、不服申立適格の範囲、審査庁になるべき機関、裁決の内容及び審理手続等について検討を加えている。

都市計画争訟研究報告書 [741KB]

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公益財団法人 都市計画協会 担当:依田 真治
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